空き家の固定資産税は本当に6倍になる?岩国・下松の所有者が知っておくべき条件
「空き家を解体すると、固定資産税が6倍になる」——よく聞く話です。
ただ、この「6倍」はそのままの意味ではありません。
「6倍」は、住宅が建っている土地に適用される6分の1の軽減が外れるという意味です。しかも更地には「評価額の70%まで」という別の上限があるため、同じ土地で比べたときの増え方は、上限でも4.2倍程度にとどまります(詳しくは本文で試算します)。
そして、もっと大事なことが2つあります。
- 解体していない空き家でも、固定資産税は上がります。市から「勧告」を受けた時点で、建物が建っていても軽減が外れます
- 逆に、解体しても軽減が続く場合があります。建て替えの予定があるときなどです
私は不動産の仕事を22年続けてきました。
この記事では、岩国市と下松市の実際の税率を使っていくら上がるのかを試算し、そのうえで「上がる条件」と「上がらない条件」を整理します。
結論:岩国・下松の税率で試算すると、こうなります
先に数字をお見せします。
土地の評価額を1,000万円・面積200平方メートルと仮定した場合の試算です(実際の税額はお持ちの土地の評価額によって変わります)。
岩国市の場合(固定資産税1.4%+都市計画税0.2%)
| 住宅が建っている | 更地にした(上限に達した状態) | |
|---|---|---|
| 固定資産税の課税標準額 | 1,000万円 × 6分の1 = 約167万円 | 1,000万円 × 70% = 700万円 |
| 固定資産税 | 約23,300円 | 98,000円 |
| 都市計画税の課税標準額 | 1,000万円 × 3分の1 = 約333万円 | 700万円 |
| 都市計画税 | 約6,600円 | 14,000円 |
| 合計 | 約29,900円 | 112,000円 |
下松市の場合(固定資産税1.4%+都市計画税0.3%)
| 住宅が建っている | 更地にした(上限に達した状態) | |
|---|---|---|
| 固定資産税の課税標準額 | 1,000万円 × 6分の1 = 約167万円 | 1,000万円 × 70% = 700万円 |
| 固定資産税 | 約23,300円 | 98,000円 |
| 都市計画税の課税標準額 | 1,000万円 × 3分の1 = 約333万円 | 700万円 |
| 都市計画税 | 約9,900円 | 21,000円 |
| 合計 | 約33,200円 | 119,000円 |
つまり、この条件では年間8万円前後の増加です。
倍率でいうと「6倍」ではなく、岩国市で約3.7倍、下松市で約3.6倍です。
1. 都市計画税は、かかる区域が限られます。岩国市は「岩国地域の市街化区域内」と「由宇・玖珂・周東地域の用途地域内」、下松市は「市街化区域内」の土地・家屋だけが対象です。区域外なら都市計画税はかかりません
2. 更地の欄は「上限に達した状態」の金額です。実際にいくらになるかは、市内の平均的な水準によって決まります(後述)。ただし「少しずつ上がる」わけではなく、解体後に最初に迎える1月1日を基準とする年度から、上限に近い水準まで上がるのが通常です
3. 建物の固定資産税は、解体すればゼロになります。その分を差し引いて考える必要があります(後述)
ご自身の土地の評価額は、毎年4月に届く納税通知書か、市の窓口で確認できます。
| 市 | 窓口 |
|---|---|
| 岩国市 | 課税課 土地班 0827-29-5055(市役所2階) |
| 下松市 | 税務課 固定資産税係 0833-45-1816(市役所) |
「6倍」の正体|住宅用地の特例が外れるということ
なぜ住宅が建っていると安いのか。「住宅用地の特例」という軽減があるからです。地方税法で決まっています。
| 区分 | 固定資産税の課税標準額 | 都市計画税の課税標準額 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(200平方メートル以下の部分) | 評価額 × 6分の1 | 評価額 × 3分の1 |
| 一般住宅用地(200平方メートルを超える部分) | 評価額 × 3分の1 | 評価額 × 3分の2 |
| 非住宅用地(住宅が建っていない土地・更地) | 軽減なし(上限は評価額の70%) | 同じ |
「6倍」という言葉は、この軽減の6分の1が外れることから来ています。
ただし、課税標準額が6倍になるわけではありません
ここが、多くの記事で省かれている点です。
住宅用地の特例が外れた土地(法律上は「非住宅用宅地等」、総務省の資料では「商業地等の宅地」と呼びます)には、課税標準額は評価額の70%を超えないという別の上限が設けられています(地方税法 附則第18条第5項)。
- 住宅がある場合:課税標準額は評価額の16.7%(6分の1)
- 更地の場合:課税標準額は評価額の70%が上限
70% ÷ 16.7% = 約4.2倍。これが増え方の上限の目安です。
つまり「6分の1の軽減が外れる」という意味では6倍ですが、上限があるため、課税標準額が実際に6倍になることはありません。
「少しずつ上がる」わけではありません
固定資産税には負担調整措置という仕組みがあります。課税標準額が低い土地は、前年度の課税標準額に評価額の5%を加えた額へ、段階的に引き上げられていく——という説明を目にすることがあります。
しかし、住宅を解体して更地になった土地には、この「段階的に」が当てはまりません。
理由は、地方税法の「用途変更宅地等」という規定です。
住宅用地から更地(法律上は「非住宅用宅地等」)に変わった土地は、負担水準の計算に使う「前年度の課税標準額」が、その土地の実際の前年度の金額ではなく、「市内にある更地などの平均的な水準」に置き換えて計算し直されます(地方税法 附則第18条の3)。
更地の課税標準額は評価額の70%が上限ですから、市内の平均的な水準も、多くの場合その近く(60〜70%)に位置します。そして負担水準が60%以上70%以下の土地は「前年度の課税標準額に据え置き」となります。
結果として、解体後に最初に迎える1月1日を基準とする年度から、上限に近い水準まで一気に上がるのが通常です。
「解体してもしばらくは安いまま」と考えていると、届いた納税通知書に驚くことになります。
なお、段階的な引き上げが行われる場合でも、その到達点は評価額の60%です(附則第18条第2項)。70%は「それを超えている土地を70%まで引き下げる」ための上限値です(同第5項)。
ご自身の土地が実際にいくらになるかは、市内の平均的な水準によって決まります。これは市の窓口でしか分かりません。解体を検討する段階で、一度お問い合わせください。
建物を解体すると、建物の固定資産税は消えます
土地の話だけで判断すると、計算を間違えます。
固定資産税は土地と建物の両方にかかっています。建物を解体すれば、建物にかかっていた固定資産税はなくなります。
つまり、実際の増減はこうなります。
(更地にした後の土地の税額)−(今の土地の税額)−(今の建物の税額)= 実際の増加額
古い木造家屋は評価額が下がっているため、建物の税額は土地の増加分より小さいことが多いですが、建物の評価額が残っている場合は差が縮まります。
納税通知書には土地と建物が別に記載されていますので、両方の金額を確認してください。
解体していないのに固定資産税が上がる3つのケース
「解体しなければ安いまま」ではありません。建物が建っていても軽減が外れることがあります。
ケース1|「特定空家等」として勧告を受けた
空家等対策特別措置法にもとづき、市から勧告を受けた特定空家等の敷地は、住宅用地の特例の対象から除外されます(地方税法第349条の3の2)。
大切なのはタイミングです。
| 段階 | 特例はどうなるか |
|---|---|
| 助言・指導 | この時点では除外されません |
| 勧告 | ここで住宅用地の特例から除外 |
| 命令 → 行政代執行 | 除外されたまま、強制的な措置へ進みます |
岩国市も公式に明記しています。
勧告を受けた場合には、空家等の敷地に係る固定資産税及び都市計画税の住宅用地の特例(軽減)から除外されます。また、命令に違反した場合には、50万円以下の過料が科されることがあります。
なお、固定資産税は1月1日時点の状態で決まるため、実際に税額が変わるのは、勧告を受けた後に迎える1月1日を基準とする年度からです。
ケース2|「管理不全空家等」として勧告を受けた
令和5年12月13日に施行された改正法で、特定空家等になる前の段階でも対象になりました。
管理不全空家等とは、適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある空き家です。この状態で勧告を受けると、やはり住宅用地の特例から除外されます(地方税法第349条の3の2、空家等対策特別措置法第13条第2項)。
指導を受けても改善されず、放置すれば特定空家等に該当するおそれが大きいと判断された場合が勧告の対象です。「まだ特定空家ではないから大丈夫」とは言えなくなりました。
ケース3|そもそも「住宅」と認められない状態になっている
勧告がなくても外れる場合があります。総務省の通知では、次の場合は特例の対象となる「住宅」に該当しないとされています。
- 構造上住宅と認められない状況にある場合
- 使用の見込みがなく、取壊しを予定している場合
- 居住のために必要な管理を怠っている等で、今後人が住む見込みがないと認められる場合
つまり、建物が建っているという形だけでは、軽減が続く保証はありません。
逆に、解体しても軽減が続く場合があります
こちらはあまり知られていません。
建て替えの予定がある場合
旧住宅を取り壊し、その翌年の1月1日時点で新しい住宅を建築中の土地は、一定の要件に該当すれば住宅用地として取り扱われます(岩国市の公式ページに明記されています)。
災害で住宅が失われた場合
災害により住宅が滅失または損壊した土地は、住宅が再建されていなくても、一定の要件に該当すれば翌年度分または翌々年度分について住宅用地とみなされます(避難指示等の期間が翌年以降に及ぶ場合は、解除後3年度分まで)。
いずれも要件がありますので、該当しそうな場合は市の課税課・税務課へご相談ください。
見落とされがちな条件|広い敷地は、全部が住宅用地ではありません
岩国・下松の郊外では、敷地の広いお住まいが少なくありません。ここに落とし穴があります。
住宅用地として軽減されるのは、家屋の床面積の10倍までです。それを超える部分は、住宅が建っていても軽減の対象外になります。
たとえば床面積100平方メートルの住宅なら、軽減されるのは1,000平方メートルまで。敷地が1,500平方メートルあれば、残りの500平方メートルは軽減されません。
「思っていたより固定資産税が高い」という土地は、この条件に当たっていることがあります。
タイミングが1年分を左右します|すべては1月1日で決まります
固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)の状態で1年分が決まります。土地の地目も、登記簿ではなく1月1日時点の現況で判定されます。
これは実務上とても大きい点です。
| 解体した時期 | その年の固定資産税 |
|---|---|
| 12月中に解体が完了した | 翌年度から更地としての課税になります |
| 1月2日以降に解体した | その年度は住宅用地の軽減が続きます(1月1日時点で住宅があったため) |
つまり、年末に急いで解体を終わらせると、1年分早く税が上がることになります。逆に、年明けに解体すれば、その年は軽減が続きます。
ただし、この場合は建物の固定資産税も1年分かかり続けます。1月1日に建物が存在していたためです(岩国市の「年の始めに家屋を取り壊した場合は」というご案内にも同じ説明があります)。土地の軽減が続く分と、建物の税がかかる分の両方を見て判断してください。
売却の予定と合わせて、解体の時期は意図的に決めるべきです。
なお、住宅を取り壊した場合は申告が必要です。岩国市では「利用状況に変更があった土地」として、1月1日時点の利用状況を申告するよう案内されています。
岩国市と下松市で違うところ
同じ山口県東部でも、税金の扱いは同じではありません。
| 岩国市 | 下松市 | |
|---|---|---|
| 固定資産税の税率 | 1.4% | 1.4% |
| 都市計画税の税率 | 0.2% | 0.3% |
| 都市計画税がかかる区域 | 岩国地域の市街化区域内/由宇・玖珂・周東地域の用途地域内 | 市街化区域内 |
| 土地の窓口 | 課税課 土地班 0827-29-5055 | 税務課 固定資産税係 0833-45-1816 |
都市計画税は下松市のほうが税率が高く、その分だけ更地にしたときの増加も大きくなります。
両市に共通する「免税点」
こちらは市による違いではなく、地方税法で全国共通に定められた仕組みです(第351条)。同じ人がその市内に所有する土地の課税標準額の合計が30万円未満であれば、固定資産税はかかりません(家屋は20万円未満、償却資産は150万円未満)。
評価額の低い土地では、更地にしても課税されない場合があります。
今、確かめておくべき3つのこと
税額の話は複雑ですが、やることは3つです。
毎年4月上旬に届きます。土地の評価額と、建物の税額が分かれば、解体後にどう変わるかの見通しが立ちます。
負担調整措置により、更地にしたときの上がり方は土地ごとに違います。これは市でしか分かりません(岩国市 0827-29-5055/下松市 0833-45-1816)。
固定資産税だけで判断すると、損をすることがあります。税額が上がっても早く売れた方が得な場合もあり、貸せば収入で税額をまかなえる場合もあります。
私がお客様と一緒に考えるときは、次の3つを並べて比べます。
| 選択肢 | 見るポイント |
|---|---|
| 売る | 手取り額と、売れるまでの期間。更地にすべきか、古家付きのままにすべきか |
| 貸す | 家賃で固定資産税をまかなえるか。修繕にいくらかかるか |
| 持ち続ける | 毎年の固定資産税と管理の手間。勧告のリスクがないか |
この比較は、査定をしないと出せません。
よくあるご質問
- 空き家を解体すると、固定資産税は本当に6倍になりますか。
-
「6倍」は、200平方メートル以下の部分に適用される6分の1の軽減が外れるという意味です。ただし更地の課税標準額には評価額の70%という上限があるため、課税標準額が実際に6倍になることはありません。住宅がある状態と比べた増え方は、上限でも4.2倍程度です。なお「少しずつ上がる」わけではなく、解体後に最初に迎える1月1日を基準とする年度から、上限に近い水準まで上がるのが通常です。
- 解体しなければ、固定資産税は上がりませんか。
-
上がることがあります。市から勧告を受けた特定空家等・管理不全空家等の敷地は、建物が建っていても住宅用地の特例から除外されます。また、取壊しを予定している場合や、管理を怠って今後人が住む見込みがないと認められる場合も、特例の対象となる「住宅」に該当しないとされています。
- 解体の時期はいつがよいですか。
-
固定資産税は1月1日時点の状態で1年分が決まります。1月2日以降に解体すれば、その年度は住宅用地の軽減が続きます。ただし補助金を使う場合は工事の完了期限があり、売却の予定にも関わりますので、税金だけで決めない方が安全です。
- 建て替えるつもりで解体します。それでも上がりますか。
-
旧住宅を取り壊し、翌年の1月1日時点で新しい住宅を建築中であれば、一定の要件に該当すれば住宅用地として取り扱われます。要件がありますので市へご確認ください。
- 都市計画税は必ずかかりますか。
-
かかる区域が限られています。岩国市は岩国地域の市街化区域内と由宇・玖珂・周東地域の用途地域内、下松市は市街化区域内です。区域外の土地にはかかりません。
- 敷地が広いのですが、全部が軽減されますか。
-
家屋の床面積の10倍までです。それを超える部分は軽減されません。
- 相続した空き家で、まだ登記が終わっていません。
-
固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されます。登記名義人が亡くなっている場合は、現に所有している方(相続人)が納税義務者になります。なお、売却については相続登記が未了でも活動を始められます(引き渡しまでには登記を完了させる必要があります)。
- 解体の費用に使える補助金はありますか。
-
岩国市には老朽危険空き家の解体費用に対する補助制度があります(上限30万円)。ただし特定空家等として勧告(空家等対策特別措置法第22条第2項)を受けていないことが要件です。詳しくは「岩国市の空き家解体に使える補助金|上限30万円の条件」の記事(この記事の末尾に関連ページとしてリンクしています)をご覧ください。
このほかのご質問は、ハピア不動産のよくあるご質問ページにもまとめています。
「上がるかどうか」より「どうするか」をご相談ください
固定資産税の話は、調べれば調べるほど複雑になります。負担水準、負担調整措置、免税点——正直なところ、ご自身で正確な金額を出すのは難しいと思います。
そして、税額が分かっても、それだけでは判断できません。大事なのは「毎年いくらかかるか」ではなく、「この空き家を最終的にどうするか」です。
「解体した方がいいのか、売った方がいいのか、貸せるのか」——この段階でのご相談で構いません。売らないという結論になっても問題ありません。
私は不動産の仕事を22年続けてきました。ハピア不動産は岩国・下松で売買仲介206件、賃貸を含めた累計1,650件以上のお手伝いをしてきました(2025年末時点)。
司法書士・税理士・解体業者・リフォーム会社・引越業者と提携していますので、税金の詳しい相談は提携の税理士へ、登記は司法書士へ、そのままおつなぎできます。
ご相談の方法
査定・売却のご相談はお問い合わせフォームから承っております(お問い合わせ種別で「売却査定・相談」をお選びください)。
お電話は岩国店 0827-35-4123、下松店 0833-48-5123(水曜定休)です。
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いただいたお問い合わせには、翌営業日までにご返信します。
「まだ売るかどうか決めていない」「固定資産税が上がると聞いて不安になった」という段階のご相談を、LINEで受け付けています。私(竹之内)が直接ご返信します。
納税通知書の写真を送っていただければ、おおよその方向性をお伝えできます。
関連ページ
- 岩国市の空き家解体に使える補助金(解体を考えている方はこちら)
- 不動産の売却について(査定から引き渡しまでの流れ)
- よくあるご質問(空き家・相続についてのご質問)
- 岩国市の物件情報(岩国エリアの売買・賃貸物件)
- 下松市の物件情報(下松エリアの売買・賃貸物件)
本記事の税制情報は2026年8月9日時点の地方税法、総務省・国土交通省の公表資料、岩国市・下松市の公式ページに基づいています。
税額は個々の土地の評価額・負担水準によって異なります。実際の税額は必ず岩国市 課税課(0827-29-5055)/下松市 税務課(0833-45-1816)へご確認ください。
宅地建物取引士 竹之内 祐輔
(賃貸不動産経営管理士/FP3級・業界歴22年)
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